ある傍観者の備忘録

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ヒーローがいない働き方改革

今、政府によるプッシュによって働き方改革が徐々に浸透してきているような気がする。ただ、ここで気をつけないといけないのは、働き方改革とは政府の政策としての働き方改革のことであり、IT技術革新などを経て働き方が徐々に変わっていくのとは別物であるという事である。

「働き方改革」は技術革新によって働き方が大きく変わることに対する政府主導の掛け声で、実際に起きている事、これから起きつつある事に対処していこうという意味では避けられない事である。ただ、政策としての働き方改革の問題は、政府がこれまでの発想法の延長として労働環境改善という事でしか捉えられていない政策であるというところにある。つまり、「働き方改革」はその趣旨とは異なり、現在の変化とはかけ離れたところにあるのが問題なのだ。

では、実際に何が違うのだろうか。「働き方改革」はベースとしている産業構造と労働の概念自体からして違うのだ。

日本政府は、産業構造の前提として日本の得意とする「ものづくり」をいつもベースにしているような印象を受ける。ただ残念なことに、時代はもう既にハードの時代は終わっており、次のソフトの時代。そして、もうソフトを通り越して、GAFAに代表されるようにエコシステムを作れるところが強さを発揮できる時代になっているのだ。

「働き方改革」はこの産業構造の変化と同時に起こっている労働自体の概念の変化も反映させるべきなのだが、そんな事お構いないしで働き方改革は策定されている。

例えば、製造業における工場を考えてみよう。労働はラインを維持していくために必要であり、そこで働く労働者は個々の時間的生産性はそこまで問題とされず、時間交代制でも成立するほど労働は個体差がない生産性を持っていると考えられる。

一方、ではプログラムなどのソフトを考えてみよう。極端な言い方をすれば、肉体労働に対して知的労働と考えてもらっても良い。ここではインプットとアウトプットの関係が製造業と大きく変わってくる。というのも、そもそも個々人の成果というものが個々によって大きく変わってくるし、人間のクリエイティブなものにおける生産性は工場で働く場合と異なってくるからである。

こうした仕事では、仕事の範囲で持って仕事を割り振って、その中で個々人が労働を自分でコントロールしながらやる方が効率的になる。そして、結果としても個々人の効率性や成果にも変化が出てくるため、労働の生み出す価値というものは労働時間とは相関がなくなってくる。結果、報酬も単に労働時間に対する対価ではなくて成果に対しての対価を評価する成果主義も取り入れなければ優秀な労働者を確保し続ける事が難しい。

では、AIとかが発達してきて、プログラミングすら機械が勝手にやってくれるようになる次の時代はどうなっていくのだろうか?

これからの時代では、新たな仕組みを考えつくアイデア自体に価値が出てくるようになる。これはインスタグラムという会社が売り上げ0、社員13人の時に810億円でフェースブックに買収された事を考えてみるとわかりやすい。

今では単体で10兆円を軽く超える評価額になっているインスタグラムの価値を考えると既に実証されているのだが、インスタグラムの価値の源泉はそのアイデア自体にあるのである。そして、その価値を作り出した創業メンバーがその価値のほどんとを生み出したのだ。だからこそ、フェースブックはこれまでの資本主義ではありえないような価格でそのアイデアを創業メンバーごと買ったのである。

では、このような新たな時代の働き方とはどんなもの相応しいのだろうか?

実は、ここで大事になってくるのがヒーローなのである。つまり、アイデアが一番価値を生むような時代では、全員が必死に頑張るより、天才的な数人のヒーローが世界を支えてくれるような時代になるからである。そのため、これからの働き方改革としては、どうヒーローが創出し、育てるような環境を整えられるかというのが大事になってくるはずなのである。

その話をすると長くなるので今回はここまでにするが、今の「働き方改革」を見てもどこにもヒーローが出てきそうにない。

頑張って働くことも悪くないが、これからの時代には何処に価値の源泉があってどうやったら労働に対する対価が発生する事を理解した上で働き方改革を考えて欲しいものである。

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